車買取の解体新書
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  2. 車買取の相場は誰が決めているのか|オークションから逆算する売り方5選

車買取の相場は誰が決めているのか|オークションから逆算する売り方5選

買取店の査定額は、業者間オークションの落札見込み額から経費と利益を引いた数字です。2026年8月27日時点で公表されている出品台数・成約率・平均成約単価から構造を逆算し、売り方5つを同じ項目で比べました。

車買取の相場は誰が決めているのか|オークションから逆算する売り方5選

「10年乗った車、いくらになるんだろう」

そう思って検索すると、査定シミュレーターと一括査定の広告ばかり出てきます。で、肝心の「その金額は誰がどうやって決めてるの?」には誰も答えてくれない。

ここ、分かりにくいですよね。

結論から言うと、買取店があなたに出す金額は、業者間オークションでいくらで売れそうか、その見込み額から経費と利益を引いた数字です。ほぼそれだけです。

この引き算の構造さえ分かると、「なぜA社とB社で10万円違うのか」「なぜ電話があんなに鳴るのか」が一気に腑に落ちます。順番に見ていきます。

なお、この記事で使う金額と台数は、すべて2026年8月27日時点で公表されているものです。相場は毎月動くので、時点をそのつど書いていきます。

この記事の目次
  1. 結論から言うと、査定額は「落札見込み額」の引き算です 🚗
  2. 売り方5つを同じ項目で並べる 📊
  3. 1位から順に、向いている人と弱点をセットで
  4. 1位|買取店に直接、2〜3社に見せる
  5. 2位|一括査定サイト
  6. 3位|オークション出品代行(ユーザー出品)
  7. 4位|ディーラー下取り
  8. 5位|個人間売買
  9. 数字で見る、車が消えていく流れ 💰
  10. 出品801万台、成約550万台という規模
  11. 会場によって平均落札額が2.7倍違う
  12. 相場は毎月動いている
  13. 相場を押し上げているのは、国内だけではない
  14. 「10年落ちだから値段が付かない」は、統計だとどう見えるか 🔧
  15. 乗用車は平均13.35年使われている
  16. 手放されるタイミングには、はっきりした山がある
  17. 査定票の「修復歴」は、誰がどう決めているのか
  18. 車を売るとき、法律はどこまで守ってくれるのか
  19. だから「契約前」がすべてになる
  20. 売る前に確認したい、車両価格以外の4つのお金
  21. 1. 自動車税(種別割)
  22. 2. リサイクル預託金
  23. 3. 自賠責保険の未経過分
  24. 4. 車検の残り期間
  25. Q1. 一括査定に申し込むと、電話は何社から来ますか
  26. Q2. 10年10万kmを超えると、値段は付かないのでしょうか
  27. Q3. 査定額はいつまで有効ですか
  28. Q4. 契約した後にキャンセルできますか
  29. Q5. 結局、どの売り方が高く売れるのですか
  30. まとめ:値段を決めているのは、あなたの目の前の担当者ではない

結論から言うと、査定額は「落札見込み額」の引き算です 🚗

買取店は、あなたの車を買ったあと、多くの場合そのまま自分の店で売るわけではありません。全国に119会場(2025年時点)ある業者間オークション、通称AA(オートオークション)に出品します。

だから査定するとき、担当者の頭の中にあるのは「この車、うちの会場でいくらで落ちるか」です。

買取価格が決まる引き算の構造 業者が読む「オークションでの落札見込み額」 ここが天井。ここより上の金額は基本的に出てこない 出品料 陸送費 点検・整備 清掃・仕上げ 売れ残りと 相場下落の リスク分 会社の粗利 あなたへの 提示額 ※ 箱の幅は構造を示すためのもので、実際の金額の比率ではありません

時間がない人向けに、条件別の結論を3行で先に書きます。

  • 手取りを少しでも上げたい → 買取店を2〜3社、日を分けて回る。同席させない
  • 手間をとにかく減らしたい → ディーラー下取り。金額差は納得ずくで
  • 中間を1段減らしたい → オークション出品代行。ただし売れ残りリスクは自分持ち

なぜこの順番なのか。その理由は、この記事の後半で数字と一緒に説明します。

ひとつ先に言っておくと、査定額は車種・時期・その会社の在庫状況で変わります。「この会社が高い」と言い切れる相手はいません。同じ会社でも、先週と今週で答えが違うことがあります。理由は、オークション相場そのものが毎月動いているからです。

選び方の基準

このあと売り方を5つ並べます。順位を付ける以上、何を見て並べたのかを先に書きます。基準を書かない比較記事は、読む価値がないと思っています。

使った基準は5つです。

基準 何を見ているか
① 中間の段数 あなたとオークション(または最終ユーザー)の間に、いくつ会社が挟まるか
② 価格のブレの小ささ 同じ車を同じ週に出したとき、金額が跳ねるか安定するか
③ 手間と所要日数 申し込みから入金までに、あなたが動く回数
④ 電話・訪問の負担 連絡が何社から来るか。断りやすいか
⑤ トラブル時の逃げ道 契約後にやめたくなったとき、法律や契約書がどこまで助けてくれるか

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このうち①〜②を重めに、③〜⑤を補正として並べています。手取りの期待値をいちばん上に置いた順番だと思ってください。

そして先に書いておきます。1位が全員にとっての正解ではありません。 平日に何度も店を回れない人にとって、1位は最下位です。基準の重みを自分でずらして読んでください。

順位は公表されている統計と制度から組み立てています。この記事は特定の会社の紹介をしておらず、広告や紹介料は受け取っていません。

売り方5つを同じ項目で並べる 📊

まず、どこに何段の会社が挟まるのかを図にします。ここが手取りの差の正体です。

売り方別・中間に挟まる事業者の段数 あなたと「次の行き先」の間に、何社挟まるか 買取店に直接(複数社) あなた 買取店 AA・自社店頭 一括査定サイト あなた サイト 買取店が同時に AA・店頭 オークション出品代行 あなた 代行会社 AA ディーラー下取り あなた ディーラー 買取店またはAA 店頭 個人間売買 あなた 買い手 段数が少ないほど手取りは残りやすい。ただし段数が減った分の手間とリスクは自分に戻ってくる

同じ項目で横並びにするとこうなります。

順位 売り方 中間の段数 価格のブレ 手間・日数の目安 電話・訪問の負担 主な弱点
1 買取店に直接、2〜3社 1段 中 店を2〜3回、1〜2週間 小さい(自分で選んだ先だけ) 平日に動ける人でないと回れない
2 一括査定サイト 1段+送客手数料 大 申込1回、連絡は集中 大きい 申し込んだ瞬間に複数社から連絡が来る
3 オークション出品代行 1段(手数料型) 大 出品〜入金で2〜4週間 小さい 売れ残ると時間だけ過ぎる
4 ディーラー下取り 1〜2段 小 新車商談と同時、追加ゼロ ほぼなし 新車値引きと混ざって内訳が見えにくい
5 個人間売買 0段 大 数週間〜数か月 個別対応 名義変更・不具合の責任が自分に残る

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「価格のブレ」を弱点ではなく事実として書いているのは、ブレが大きい=上にも下にも振れるからです。上振れだけを期待して選ぶものではありません。

1位から順に、向いている人と弱点をセットで

1位|買取店に直接、2〜3社に見せる

自分で店を選んで、日を分けて持ち込む。いちばん地味ですが、構造上いちばん理にかなっています。

理由は3つあります。

ひとつ、中間が1段しかない。ふたつ、相手の在庫状況を聞き出す余地がある。「いま同じ型を探しているお客さんがいる」状態の店は、オークション相場より上を出せることがあります。これは値引き交渉ではなく、その店の都合と自分の車がたまたま噛み合ったという話です。

みっつ、日を分けることで「その場で決めない」が自然にできます。後述しますが、車の売却は契約後のやり直しが効きにくい取引です。

向いている人:平日か土日に2〜3回、店に行ける人。近隣に買取店が複数ある地域の人。

弱点:時間がかかります。地方で店が1社しかない地域だと、そもそも比較が成立しません。あと、複数社を同じ日の同じ時間に呼ぶ「同席査定」は、その場で決めろという圧が強くなりがちです。国民生活センターに寄せられた事例でも、自宅に3社を呼んだ結果、午前の1社に居座られたという相談が紹介されています(国民生活センター「相談情報ピックアップ 第53回」2023年12月)。

2位|一括査定サイト

1回の入力で複数社に情報が渡ります。手間の割に金額が動きやすいので2位に置きました。

ただし、電話が集中します。 これは業者が失礼なのではなく、仕組みがそうなっているからです。

一括査定サイトは、申込者の情報を提携する買取店に配信して、成約時などに手数料を得るモデルです。買取店から見ると、その情報にはお金がかかっている。しかも同じ情報が他社にも同時に届いている。だから「先に電話した会社が有利」という状態になります。

早い者勝ちの構造がある以上、申し込んだ直後に鳴るのは合理的な行動です。腹は立ちますが、担当者個人の問題ではありません。

国民生活センターの相談事例には、断ったあとも「20回近く電話がかかってきた」というものが載っています。ここまで来ると別の問題です。

向いている人:短期間で金額の当たりを付けたい人。電話を受けられる時間帯がはっきりしている人。

弱点:連絡が集中すること。そして、提携社数が多いサイトほど負担も増えます。申し込む前に「何社に情報が渡るのか」を確認して、選べるサイトなら数を絞ってください。

3位|オークション出品代行(ユーザー出品)

買取店を通さず、代行会社を使って自分の車をAAに出す方法です。落札額から手数料を引いた額が手取りになります。

構造としては、図の「買取店の粗利」と「在庫リスク分」が抜けます。うまくいけば手取りは上がります。

向いている人:急いでいない人。人気車種・希少グレードで、業者の取り合いが起きそうな車を持っている人。

弱点:はっきり書きます。売れ残ります。 2025年のAA全体の成約率は68.6%でした(日刊自動車新聞調査、日本自動車会議所2026年3月4日掲載)。つまり出品された車のおよそ3割は、その回で買い手が付いていません。

再出品すればそのたびに費用と時間がかかります。売却の期限が決まっている人には向きません。

4位|ディーラー下取り

金額の期待値では上位に来ませんが、手間はゼロに近い。新車の納車と同時に引き渡せるので、代車も要りません。

向いている人:新車に乗り換える人。売却に時間を使いたくない人。

弱点:内訳が見えにくいことです。新車の値引きと下取り額はディーラー側で調整できるので、「下取り20万円」と言われても、それが車の評価なのか値引きの付け替えなのか外からは分かりません。

対策は単純で、車両値引きと下取り額を別々に書いてもらうことです。書面で分かれていれば、下取り額だけを他社の査定と比べられます。

5位|個人間売買

中間ゼロ。理屈のうえでは手取りが最大になります。

向いている人:相手が身内や知人で、車の状態をお互い分かっている場合。

弱点:ここは正直、おすすめしにくいと思いました。名義変更が終わらないと、翌年度の自動車税の納税義務者は変わりません。東京都主税局は「4月1日現在、自動車の所有者として自動車検査証に登録されている方に1年分が課税されます」と明記しています。手続きが止まれば、税金の請求はあなたに来ます。

売ったあとに不具合が出たときの責任も、契約で決めておかないと揉めます。JPUC(日本自動車購入協会)の相談事例にも「個人間売買に関するトラブル」という分類が独立して置かれているくらいです。

数字で見る、車が消えていく流れ 💰

ここからが、この記事でいちばん書きたかったところです。ランキングだけなら他にいくらでもあります。公表されている統計を並べると、査定額の背景がかなり具体的に見えてきます。

2025年の中古車流通・台数の全体像 あなた 買取店・ディーラー (下取り・買取) 業者間オークション(119会場) 2025年 総出品 801.4万台 前年比 7.0%増 成約 549.9万台 成約率 68.6%(残り約3割は不成約) 国内で次の持ち主へ 中古車登録・届出 650.8万台 2025年度・小売台数ではない 海外へ輸出 中古車輸出 170.9万台 2025年・3年連続で過去最高

出品801万台、成約550万台という規模

日刊自動車新聞の調査によると、2025年のAA総出品台数は801万3,936台(前年比7.0%増)、総成約台数は549万8,787台、成約率は68.6%でした。会場数は119会場(前年120会場)。この記事は日本自動車会議所のサイトに2026年3月4日付で掲載されています。

規模の比較として。同じ2025年度の中古車登録・届け出台数は650万7,998台(登録車363万570台、軽自動車287万7,428台)です。

ここで注意点をひとつ。自販連(日本自動車販売協会連合会)が公表している中古車登録台数は、小売台数ではありません。 統計の注記に「新規登録台数と所有権の移転登録台数及び使用者名の変更登録台数の3業務合算のナンバーベース」と明記されています。同じ車が年に複数回カウントされることがあります。

つまり、AAの成約台数と中古車登録台数を単純に引き算しても意味は出ません。ただ、「800万台が業者間で動き、550万台に値が付いている」市場の上に自分の1台が乗っている、という感覚は持っておいて損がないと思います。

会場によって平均落札額が2.7倍違う

これが個人的にいちばん面白かった数字です。

2026年1月のAA主要4事業者の平均成約単価は、こうなっていました(日本自動車会議所、2026年2月12日掲載)。

事業者 2026年1月の平均成約単価 前年同月比
USS 134万6,000円 7.7%増(過去最高)
TAA 90万9,000円 15.5%増(過去最高)
CAA 81万9,000円 0.9%増
JU中商連 49万8,000円 16.8%増(直近5年で最高)

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いちばん高い会場といちばん低い会場で、約2.7倍の開きがあります。

これは「JUの会場が安く買い叩いている」という話ではありません。扱っている車の層が違うだけです。年式の新しい下取り車が集まる会場と、走行距離の多い車や軽自動車が中心の会場では、平均が違って当たり前です。

ここから読者にとって実用的な結論がひとつ出ます。買取店ごとに、得意な会場と苦手な会場がある。 あなたの車が「その店がいつも使っている会場でよく売れる型」なら高く出るし、そうでなければ他社に流れます。10万円の差は、多くの場合これです。担当者の気分ではありません。

相場は毎月動いている

「先週の査定額はもう古い」と言われる理由も、数字で確認できます。

USS(ユー・エス・エス)は上場企業なので、月次のオークション実績を公表しています。2027年3月期(2026年4月〜)の速報値がこちらです。

月(2026年) 出品台数 成約台数 成約率 成約車両単価
4月 348,991台 224,073台 64.2%(前年61.1%) 122万1,000円
5月 281,669台 185,404台 65.8%(前年64.5%) 131万円
6月 319,720台 209,525台 65.5%(前年63.4%) 131万5,000円
7月 352,947台 225,196台 63.8%(前年66.2%) 134万5,000円
4〜7月累計 1,303,327台 844,198台 64.8%(前年63.7%) 129万7,000円

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出典:株式会社ユー・エス・エス「USSオートオークション実績(速報)2027年3月期 オークション月次データ」(2026年7月度分)

4月から7月で、平均単価が122万円から134万円へ動いています。4か月で約12万円。 これは全国平均の話なので個別の車には直結しませんが、「相場が動く」の実感としては十分だと思います。

7月は出品が前年比115.0%と大きく増え、成約率は63.8%と前年の66.2%を下回りました。玉が増えれば成約率は下がる。それでも単価は上がっている。需給が単純な一方通行ではないことが分かります。

相場を押し上げているのは、国内だけではない

2026年1月にUSSの落札単価が過去最高を更新したとき、要因として挙げられていたのは「輸出事業者の仕入れ意欲が高く、相場を押し上げた」でした(日本自動車会議所、2026年2月6日掲載)。

輸出の規模も確認しておきます。日本中古車輸出業協同組合(JUMVEA)の公表によると、2025年の中古車輸出は170万8,604台で前年比9.1%増。3年連続で過去最高です。仕向け地はUAEが25万2,637台で2年連続首位、次いでロシア18万6,584台、タンザニア11万7,489台と続きます。

ここで、ひとつ食い違いに触れておきます。

自販連の統計では、2025年の輸出抹消登録台数は164万727台(前年比102.2%)です。JUMVEAの170万8,604台と、約7万台ずれています。

これは、集計の対象が違うためと考えられます。自販連の輸出抹消登録は運輸支局に登録された車(普通車・小型車)のナンバーベース、JUMVEAの数字は貿易統計ベースで軽自動車も含みます。どちらかが間違っているのではなく、数え方が違う。 ネット上ではこの2つが混ざって使われていることがあるので、数字を見るときは出典を確認してください。

いずれにせよ、あなたの車の値段の一部は、海外の需要が決めています。 国内で「もう古い」と思われている年式でも、輸出先で人気があれば値が付く。この記事を書きながら、これがいちばん腑に落ちた点でした。

「10年落ちだから値段が付かない」は、統計だとどう見えるか 🔧

ここ、読者がいちばん知りたいところだと思います。

先に正直な話をします。年式・走行距離別の買取相場を公表している公的統計は、見つかりませんでした。 業界団体も省庁も、車種別の平均落札価格までは公開していません。会場ごとの平均単価が限界です。

なので「10年10万kmの軽なら◯万円」という数字を、この記事では出せません。ここは調べていて、正直いちばん困ったところでした。

代わりに、公的統計から言えることを2つ書きます。

乗用車は平均13.35年使われている

自動車検査登録情報協会(自検協)の令和7年(2025年)3月末データによると、こうなっています。

指標 令和7年3月末 前年との比較
乗用車の平均車齢(軽を除く) 9.44年 0.10年延び、31年連続で最高齢を更新
乗用車の平均使用年数(軽を除く) 13.35年 0.03年延び、4年ぶりに長期化
── 普通乗用車 12.74年 0.01年短期化
── 小型乗用車 13.97年 0.09年長期化
貨物車の平均車齢 12.13年 初めて12年台に
貨物車の平均使用年数 16.29年 13年連続の長期化で過去最長

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平均車齢は「いま走っている車の平均年齢」、平均使用年数は「新車登録から抹消登録までの平均年数」です。定義が違うので混ぜないでください。

対象となる乗用車の保有台数は3,868万275台。日本の乗用車は、平均して13年以上使われてから登録を抹消されているということになります。

10年落ちは、統計上「まだ平均に届いていない」段階です。

手放されるタイミングには、はっきりした山がある

自検協の資料には、初度登録年度ごとの年間減少台数(=1年間に抹消された台数の推計)が載っています。これをグラフにすると、面白い形が出てきます。

経過年数別の年間減少台数(乗用車計・令和7年) 1年間に登録が消えた台数(乗用車計・軽を除く/令和7年) 24.4万台 3.5 5.5 7.5 9.5 11.5 13.5 15.5 17.5 19.5 初度登録からの経過年数(年) 車検を迎える年にあたる区分。山がそろって立っている

濃い色の棒が、初回3年・以降2年ごとの車検にあたる年です。5.5年、9.5年、11.5年、13.5年、15.5年、17.5年。きれいに山が立っています。

具体的な台数で見ると、経過15.5年が24万3,834台で最大、13.5年が22万8,064台、11.5年が19万7,002台、17.5年が18万6,633台。一方でその間の年(6.5年で4万240台、8.5年で7万4,330台)は明らかに低い。

多くの人は、車検を通す前に手放している。 データはそう読めます。因果までは統計から断言できませんが、車検費用を払うかどうかの判断が売却タイミングを作っている、と考えるのは自然だと思います。

そしてこれは、売る側にとって意味を持ちます。車検の切れ目には手放す人が集まる。ということは、同じ時期に似た車がオークションに増えている可能性がある。玉が増えれば、成約率は下がります。7月のUSSのデータがまさにそうでした。

「車検が切れる直前に売るのが得」とは言い切れません。ただ、みんなが同じ動きをしているタイミングだ、ということは頭に入れておいていいと思います。

査定票の「修復歴」は、誰がどう決めているのか

査定額を大きく動かす項目が「修復歴」です。ここは業界の自主基準で細かく決まっています。

修復歴とは、骨格部分(車の骨組み)を交換したり直したりした履歴のことです。ぶつけたかどうかではありません。

自動車公正取引協議会が2019年3月26日に出した会員向け文書によると、この基準は3つの団体が同じものを使っています。

  • 自動車公正取引協議会(自動車公正競争規約)
  • 日本自動車査定協会(修復歴判断基準)
  • 日本オートオークション協議会(修復歴判定基準)

つまり、買取店の査定票とオークションの出品票は、同じ物差しで書かれているわけです。ここが繋がっているから、査定額をオークション相場から逆算できます。

2019年4月1日からの基準では、骨格部位はクロスメンバー、サイドメンバー、インサイドパネル/ダッシュパネル、ピラー、ルーフ、センターフロアパネル/フロアサイドメンバー、リヤフロアの区分で判定されます。

覚えておくと役に立つのが、この2点です。

その1:外板だけなら修復歴にはなりません。 同資料には「外部、外板を介さない損傷又はその修理跡があるものは修復歴としない」と注記されています。ボンネットやドアの外板、バンパーの交換だけなら、原則として修復歴の扱いにはなりません。

その2:小さな損傷の基準は「カードサイズ」です。 2019年の改正で、それまでの「軽微なもの(500円玉程度)」から「小さなもの(カードサイズ未満)」に変わりました。カードサイズは同資料で8.5cm×5.4cmと明記されています。

「修復歴ありと言われたけど納得いかない」というとき、どの部位のどんな損傷を指しているのかを聞いてみてください。基準は公開されています。

車を売るとき、法律はどこまで守ってくれるのか

ここは知らないと損をするところなので、はっきり書きます。

買取店に車を売る契約に、クーリング・オフはありません。

国民生活センターの解説にこう書かれています。

車の売却は、事業者が訪問した際の勧誘による契約であっても、特定商取引法におけるクーリング・オフの対象外です。
(国民生活センター「相談情報ピックアップ 第53回 中古自動車売却トラブル」国民生活2023年12月号)

特定商取引法には「訪問購入」という規制があります。自宅に来た業者に物を売る取引を対象に、書面交付やクーリング・オフ(書面を受け取った日から8日以内)、引渡しの拒絶権を定めたものです(消費者庁「特定商取引法ガイド」)。

ところが、四輪自動車はこの規制の対象から外れています。

対比すると分かりやすいのですが、バイク(二輪自動車)は対象です。 自動車公正取引協議会が会員向けに出した資料は、タイトルからして「バイクを買取りする際のルールが変わりました」で、「二輪自動車(バイク)についても規制の対象となります」と書かれています。わざわざこう書くのは、四輪が対象外だからです。

同じ「自宅で査定して売る」なのに、バイクは8日間やり直せて、車はやり直せない。ここ、納得いかない人も多いと思います。私も調べていて、この線引きは分かりにくいと感じました。

だから「契約前」がすべてになる

やり直しが効かない以上、守れるのは契約の前だけです。国民生活センターと消費者庁のアドバイスは、そろって同じことを言っています。

  • その場では契約しない。 査定額を聞いても、いったん持ち帰る
  • 契約書を先に読む。 とくにキャンセル料は、金額と「いつから発生するか」の両方を確認する
  • 困ったら相談する。 消費者ホットライン「188」、またはJPUC車売却消費者相談室(0120-93-4595、平日9:00〜17:00)

相談件数も見ておきます。国民生活センターによると、中古車の売却に関する相談は2018年度1,151件、2019年度1,229件、2020年度1,211件、2021年度1,519件と増えてきました。相談内容は「契約・解約」に関するものが全体の9割弱を占めています。

買取業界の団体であるJPUCは、消費者相談窓口の設置、買取事業者やWEB広告表現に対するガイドラインの制定、適正買取店認定制度といった自主規制に取り組んでいます。相談室の実績は15,000件以上と公表されています。法律の穴を、業界側の自主ルールで埋めようとしている構図です。

ひとつ、事前に自分で確認できることもあります。車の買取は古物営業にあたるので、古物商許可が要ります。申請先は営業所を管轄する警察署の防犯係で、手数料は19,000円(警視庁)。許可番号は店に掲示されているはずなので、見ておいて損はありません。

売る前に確認したい、車両価格以外の4つのお金

査定額だけを見ていると取りこぼす項目があります。全部、契約書の内訳に出ているかどうかの話です。

1. 自動車税(種別割)

東京都主税局の説明はこうです。年度途中で名義を変えても、その年度分の全額を払う義務は前の所有者に残ります。 新しい所有者への課税は翌年度からです。

一方、抹消登録した場合は「抹消登録した月の翌月から月割で減額」されます。還付の通知は自動で届き、別途申請は要りません。

つまり、買取店に売る(=移転登録)ケースでは、都道府県からの還付はありません。 未経過分を買取額に含めてもらう扱いになるかどうかは、契約書次第です。「自動車税相当額」の記載があるか確認してください。

なお軽自動車税には月割の仕組みがないので、扱いが変わります。

2. リサイクル預託金

新車購入時に預けているお金です。東京都環境局の説明によると、中古車として売却する場合は次の所有者に引き継がれ、元の所有者は資金管理料金を除いた預託金相当額を次の所有者に請求できます。

金額の目安も公表されています。

内訳 金額の目安
シュレッダーダスト料金 4千〜2万円
エアバッグ類料金 2千〜6千円
フロン類料金 2千円
情報管理料金 230円
資金管理料金 380円(廃車時480円)
合計 6千〜3万円(平均1万円/台程度)

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出典:東京都環境局「リサイクル料金について」

1万円前後のお金です。査定額に含まれているのか別枠なのか、これも契約書で確認してください。

3. 自賠責保険の未経過分

車検と同時に加入している強制保険です。名義とともに引き継がれる扱いになるので、未経過分の精算があるかどうかを見ておきます。

4. 車検の残り期間

査定の加点要素になります。ただし、車検を通してから売っても、かけた費用がそのまま上乗せされるとは限りません。前述のとおり、車検のタイミングで手放す人が多く、そこで玉が増えるためです。車検費用を払う前に一度査定に出してみる、という判断はあっていいと思います。

よくある質問

Q1. 一括査定に申し込むと、電話は何社から来ますか

サイトによって提携社数が違うので一概には言えません。申し込む前に「何社に情報が渡るのか」「連絡方法を選べるか」を確認してください。選べるサイトなら社数を絞れます。

電話が集中するのは、同じ情報が複数社に同時配信され、早く連絡した会社が有利になる仕組みだからです。担当者の熱意の問題ではありません。

Q2. 10年10万kmを超えると、値段は付かないのでしょうか

年式・走行距離別の相場は公的統計として公表されていないので、金額は答えられません。

ただ、自検協の令和7年3月末データでは、乗用車(軽を除く)の平均使用年数は13.35年です。10年落ちは平均に届いていない段階です。加えて2025年の中古車輸出は170万8,604台と3年連続で過去最高。国内で古いとされる車にも、海外の買い手がいます。

「値段が付かない」と言い切れる根拠は、少なくとも公表統計の中には見当たりませんでした。

Q3. 査定額はいつまで有効ですか

会社ごとの取り決めなので、その場で聞いてください。

参考までに、USSの平均成約車両単価は2026年4月の122万1,000円から7月の134万5,000円まで動いています(同社月次データ)。全国平均でこの動き方なので、「今日の査定額が来月も同じ」と考えないほうがよさそうです。有効期限が短いのは、業者側が煽っているとは限らず、実際に相場が動くからでもあります。

Q4. 契約した後にキャンセルできますか

車の売却は特定商取引法のクーリング・オフの対象外です(国民生活センター)。したがって、キャンセルできるかどうか、できるとしていくらかかるかは、契約書の条項次第になります。

国民生活センターに寄せられる相談も「契約・解約」に関するものが9割弱を占めています。署名する前に、キャンセル料の金額と、それが発生し始めるタイミングを確認しておいてください。

Q5. 結局、どの売り方が高く売れるのですか

車種・年式・時期・その会社の在庫状況で変わるので、事前に決まった答えはありません。

構造から言えるのは、中間に挟まる会社の段数が減るほど、手取りに残る金額は増えやすいということだけです。ただし段数が減った分の手間とリスクは、そのまま自分に戻ってきます。オークションの成約率が68.6%(2025年)ということは、出品しても3割は買い手が付かないという意味でもあります。

「高く売る方法」ではなく「自分がどこまで手間とリスクを引き受けるか」で選ぶのが、たぶん現実的です。

まとめ:値段を決めているのは、あなたの目の前の担当者ではない

もう一度、構造を整理します。

  1. 買取店の提示額は、オークションの落札見込み額から、出品料・陸送費・整備費・売れ残りリスク・粗利を引いた残り
  2. だから会社ごとに額が違う。得意な会場と扱う車の層が違うから。2026年1月の平均成約単価は、会場によって49.8万円から134.6万円まで開いていた
  3. 相場は毎月動く。2026年4月から7月で、USSの平均単価は約12万円上がった
  4. 押し上げている要因の一つは輸出。2025年の中古車輸出は170万8,604台で過去最高
  5. 手放すタイミングには車検の年に山がある。同じ時期に似た車が集まる
  6. 車の売却にクーリング・オフはない。守れるのは契約の前だけ

目の前の担当者は、相場を決めてはいません。読んでいるだけです。そう思えると、査定の場は少し落ち着いて座っていられるようになるはずです。

この記事の数字は2026年8月27日時点で公表されているものです。オークション実績は月次で更新されるので、判断する前に元の資料を見に行ってください。出典は記事の冒頭にまとめてあります。

出典